ヘルスツーリズム/ウェルネスツーリズム

ヘルスツーリズムとは

ヘルスツーリズムとは、旅先で健康や療養を行う旅のスタイルで、滞在日数の増加やリピーター増が期待できます。また、地域の方々も同じような健康プログラムを活用することで、地域全体で健康や保養が行える場所となります。

ヘルスツーリズム振興機構によると、これらヘルスツーリズムにおける潜在市場規模は4兆円とも言われています。

最近では、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、ストレス、認知症など多くの健康問題があります。これらの予防や解消等を旅先で行うことができれば、多くの来訪者増が望めると考えます。

ヨーロッパでは、100年以上前から地域資源を健康や保養に活かす取り組みがあります。これらを健康保養地と呼び、健康プログラムも確立しています。

和歌山県の熊野古道では、10年前より地域資源を健康や観光に活かす取り組みを進めており、先進的な内容に注目が集まっています。国内はもちろん、韓国などからの視察も年々増加しています。

ヨーロッパに見られるように、健康保養の街づくりを行い、住んでよし訪れてよしの健康保養地とすることが地域発展につながると考えられます。

熊野古道の健康効果検証の結果、多くの健康効果があることがわかり、それをもとにしたプログラム開発を行いました。

マーケットは豊富で、対象・目的別のプログラムを、様々な分野へ応用できることが期待できます。

ヘルスツーリズムは、旅を通して地域資源や文化・歴史・風土などに触れ、旅先での健康づくり体験や観光などを通して、癒しやリフレッシュ、積極的健康づくり、NCDs(非感性性疾患)の予防や改善など健康への気づきになる新しい旅のスタイルで、安心安全で健康につながる旅としての魅力から企業や個人、海外からの訪問客にとっても期待されている分野です。

ヘルスツーリズムという言葉は、1973年IUOTO(International Union of Official Travel Organizations)の総会で初めて使用され、日本でヘルスツーリズムという言葉が使われるようになったのはおおよそ2000年ごろ。そして、観光立国推進基本計画(2007年)においてヘルスツーリズムは「自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復・増進・保持する観光形態」と定義され、ニューツーリズムのひとつとして地域活性を目的に行政が主導的に取り組むことから広がりをみせました。観光庁は「住んで良し訪れて良し」の観光地域づくりを推奨しており、観光客と地域住民の双方に配慮し、多面的かつ客観的なデータ計測と中長期的な計画に基づく総合的な観光地マネジメントを行うことが重要だとしています。

2007年に内閣府の認定を受けた特定非営利活動法人日本ヘルスツーリズム振興機構(2006年より事業開始)は、経済産業省との連携により「日本ヘルスツーリズム認証」制度の中核をなし、ヘルスツーリズムの発展に寄与しています。

ヘルスツーリズムの歴史

ヘルスツーリズムの歴史を見ると、海外では、紀元前460年~377年にヒポクラテスによる海水の利用による海洋療法が最も古く、1674年にはエジプトJohn Floyerの10℃の水に浸かり、冷気を浴びての適度な運動やイギリスの医師Richard Russell(1687-1759)による虚弱、貧血、貧弱、抵抗効力に弱く感染症に罹りやすい体質に対する海水による効果など温泉療法や入浴療法と同様の歴史的背景があります。

わが国でも、古くから「かわいい子には旅をさせよ」という言葉があり、お伊勢参りや熊野詣、西国三十三ヶ所巡り、四国八十八ヶ所お遍路参りなどは、旅をすることそのものが修行やご利益(りやく)につながると考えられており、これらが我が国の最初のヘルスツーリズムかもしれません。また、農閑期に温泉に出かけて疲労回復や療養などを目的とした旅が初期のヘルスツーリズムと言えるでしょう。

ウェルネスツーリズムとヘルスツーリズム

ウェルネスツーリズム起源は、古代ローマの戦士達の傷や病気の治療に効果的なSPA(温泉入浴)で、その後、温泉の医学的効果の検証が進み18世紀頃には、高級保養地やそのための都市形成がなされヘルスツーリズムの中に娯楽を伴った旅「ウェルネスツーリズム」へと変遷していきます。

Global Spa & Wellness Summit(2013)の発表資料によると、現在世界中で行われているウェルネスツーリズムのほぼ半数はスパツーリズムです。

つまり、健康や保養を目的とした旅で、主にSPAを活用し娯楽や観光地巡り、高級保養所での滞在のスタイルへと時代とともに変遷を遂げ、ヘルスツーリズムもウェルネスツーリズムも、伴に健康や保養が目的であり、ヘルスツーリズムは主に健康づくりや疾病予防、健康への気づきにつながる旅の形態で、ウェルネスツーリズムは、娯楽や高級志向の旅の中で健康の要素のある旅の形態と整理することができます。

ウェルネス経済

世界の旅行トレンドとしてのヘルス&ウェルネス市場は、総額4.4兆ドルと報告されています (2020 Global Wellness Economy)。最も多いのは、パーソナルケアと美容(9,550憶ドル)、次いで健康的な食事、栄養とダイエット(9,460憶ドル)、次に身体活動(7,380憶ドル)、そしてウエルネスツーリズム・ヘルスツーリズム4,360憶ドル、その中で、今後の成長率が最も高いと予想されるのがウエルネスツーリズム・ヘルスツーリズムで、20.9%となっています。